長年の嗅覚・味覚障害が、鍼灸施術により改善した症例 (大阪市 30代 女性)
お悩みの症状
今回の症例は、「嗅覚障害」の方です。数年前にきっかけがあまりなく発症をしたとのことで、来院した当時は、当院で使っているお灸の香りすらも全くわからないような状態でした。
病院へは週に1回の通院をずっと続けていたようですが、薬と鼻腔内の洗浄を毎回してもあまり変化が無く、現状維持をできているだけマシなのかもということで続けていたようでした。
鼻腔内の内視鏡も、鼻茸(はなたけ)が確認できるとのことで、先月掲載した症例と似たような状態になっていました。
それでも悪化していっていたため、別の方法を探したところ、当院をみつけたとのことでした。
治療方法
1.カウンセリング・検査
2.脈診、舌診、腹診で体の状態の把握・症状と照らし合わせる。
3.ハリの説明を治療前に行う
4.上向きで手足と頭に数本ハリを打つ
5.抜いてうつ伏せになり、背中にハリを打つ
当院での治療後の患者様の感想
今回の症例の方は、きっかけが思い当たらないとのことで、数年前の発症時の経過を確認しても、これといった原因が分かりませんでした。鍼灸施術で効果をしっかりと出すためには、問診をしっかりとすることも大事なのですが、その原因が絞れません。
よって、脈や腹部の状態、舌などを確認して、弁証(べんしょう)といって、原因を特定して施術を始めました。
このかたは他に、体のだるさや胃腸の疲れなども強く、「脾虚(ひきょ)」といって、胃腸症状が弱くなり、免疫力の低下から、嗅覚などの感覚障害が出ていると捉える事ができました。
「脾虚」が強いと、「水湿(すいしつ)」と言って、体の中の水分の流れが非常に悪くなります。 天気が悪い時に症状が出る場合も、ほとんどの場合はこの「脾虚」が関わっています。
そのせいで鼻腔内の粘膜が腫れてしまい、感覚器である嗅毛部といって、嗅覚を感じる組織の働きが阻害されている状態ですね。
味覚に関しても、嗅覚が落ちると感じにくくなる場合が多いですので、初期はそれで当てはめて施術をすすめていきました。
しばらく通院を続け、2カ月程経過した辺りで、体の倦怠感などの、主訴とは違う部分が非常に楽になったとの事。 ただ、肝心の嗅覚、味覚障害に関しては感じたり感じなかったりを続けていました。
ここで施術の方針を変える必要があるだろうと判断。
「症状が軽減したり戻ったりする。」これは自律神経の乱れなど、ストレスが関わることが多い病態だからです。
中医学的には「肝鬱」といって、体の感覚器や自律神経の乱れが影響してしまう状態です。 現代でいうと、ストレスですね。
本人にもその旨を伝え、ストレス性が強くあるかもしれないとお話をしたところ、 症状が激化したきっかけを思い出されました。
当時が仕事の異動や、人間関係などで非常にストレスが強かったとの事。
これにより、初期のきっかけがはっきりしたため、施術を「肝鬱脾虚(かんうつひきょ)」という証での施術に変更しました。
「肝鬱脾虚」は、元来の脾虚、もしくは肝鬱傾向の方が、お互いに作用しあってしまい、どちらの病態も進行してしまう証となります。
これは西洋医学的にも説明ができ、肝鬱、いわばストレスにより自律神経が乱れる事で、 「脾」である胃腸につながる自律神経、「迷走神経(めいそうしんけい)」の働きが乱れることで起こります。
ただ、肝鬱の場合は、普段のストレス指数にも関係してしまうため、切り離せる生活が仕事をしている以上中々できないため、改善に時間が掛かってしまいます。
上記の点を考慮しつつ、根気よく施術を続けて下さった結果、 半年ほど経過した現在はほとんどの匂いや味覚が戻ってきました。
以前は毎週のように耳鼻科へかかっていたようですが、その手間も無くなり、非常に体が楽になったとのことで、こちらとしてもとても安心しました。
色々な原因になる現代人は、普通の腰痛や肩こり、他の内科的な疾患でも、施術のやり方次第で効果が望める場合が多いです。